大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ネ)1354号 判決

右手形の引受は藤岡の意思に基いてなされたものとはいえず、吉田において、その代表権に加えられた前示の制限に反してなしたものといわなければならない。しかし信用金庫法第三十九条によれば、信用金庫の理事につき商法第二百六十一条が準用されるので、同条第三項によりさらに商法第七十八条、民法第五十四条の規定が準用され、控訴金庫は右吉田の代表権に加えた制限をもつて善意の第三者に対抗できないものというべきである。しかし右の規定の適用については代表権の制限を主張する者において第三者の悪意を立証する責を負うものと解されるところ、本件において手形引受の直接の相手方である受取人佐々木隆治において右の制限を知つていたと認めるに足る証拠がないばかりでなく、前記規定にいわゆる第三者とは直接の相手方だけでなく、本件における被控訴人のようにその後の手形の権利の取得者をも含むと解するのが相当であるから、控訴人は被控訴人(右制限を知つていたと認められる証拠はない)に対し前示代表権の制限の存することを主張し得ないものといわなければならない。してみれば右吉田が自ら控訴金庫の代表者として手形行為をしたというだけでは控訴金庫はその責任を免れない。

もつとも右吉田は本件手形の引受にあたり、控訴金庫の代表者として自己の署名もしくは記名押印をしたのでなく、代表者として藤岡の名義を用いたことは既に述べたとおりであるから、前記の点から直ちに本件手形につき控訴金庫の責任を肯定すべきものといえるかについては問題がないわけではない。しかし、前示引用にかかる原判決の認定によれば、控訴金庫の当時の理事長藤岡は他の代表理事平川もしくは吉田に理事長印の使用を認め、その承認の下に、平川もしくは吉田において控訴金庫のため手形行為をする場合には、理事長名義の記名押印をする扱いであつたことが窺い知られる点に思いをいたし、かつ法人の手形行為については実質的には代表権ある者による法人名義(手形行為の効果の帰属者)の記載の有無が重要であると解される点を考慮すれば本件において前示のように吉田が控訴金庫の代表者として自己を表示したか、前記取扱の通例に従い理事長を表示したかによつて第三者の保護につき結論を異にするのは妥当でないと考えられる。従つて、前示代表者名義に拘らず、控訴人は右吉田の代表権の制限を主張し得ない結果として、本件手形につき責を負うべきものとするのが相当である。

(梶村 室伏 安岡)

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